2010年8月16日月曜日

甲子園の詩

 
毎年、夏の高校野球シーズンは、歌鬼こと阿久悠が、スポーツニッポンに連載していた「甲子園の詩」を読むのを楽しみにしていました。彼がこの世を去ってから早くも3年。今年も、天国から熱い視線で、連日繰り広げられる高校球児達の汗と涙の戦いを、ノート片手に見つめていることでしょう。

生前、彼はこの試合に感動し、翌日のスポニチに「最高試合」という詩を寄せました。



君らの熱闘の翌日から

甲子園は秋になった

東南の海を駈ける台風が

思わず走りをとめてのぞくほど

試合は熱く長く激しく

翌日の空は

熱気をはらんでいるものの高く澄み

もう秋だった

 
それにしても君らが示したあの力は

一体何だったのだろうか

 
奇跡とよぶのはたやすい

だが

奇跡は一度だから奇跡であって

二度起きればこれは奇跡ではない

 
言葉がない

言葉で示そうとするのがもどかしい

一瞬でいいつくす言葉の奇跡が

ぼくにはほしい

 
勝利は何度も背を向けた

背を向けた勝利を振り向かせた快音が

一度 そして 二度起きたのだ

 
誰が予測できるだろう

祈ることはあっても

願うことはあっても

予測出来るはずがない

ましてや 確信など誰にあろうか


熱く長い夏の夜

人々の胸に不可能がないことを教え

君らは勝った

球史にのこる名試合は

箕島・星稜

時は昭和五十四年八月十六日

君らの熱闘の翌日から

甲子園は秋になった


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